ヘルスケア新規参入コラムNo.020 単回使用パルスオキシメータプローブ——本体の6倍、279億円の使い捨て市場
毎週1つの医療機器を公的統計の数字で読み解き、部材供給から最終製品まで、中小企業の事業機会を探すシリーズです。
皆さん、こんにちは!ヘルスケアビジネス総研の原です。
指先に挟んで血液中の酸素飽和度を測る、パルスオキシメータ。その指に当てるセンサー部分を、プローブといいます。今回の品目は、その中でも使い捨てを前提に作られた単回使用プローブです。病院では、感染対策などの理由から、患者さんごとにプローブを使い分けることが多く、使い捨てのプローブが大量に消費されています。
地味な消耗品に見えるかもしれません。しかしこの品目には、見逃せない事実があります。測定器の本体より、この使い捨てプローブの市場のほうがはるかに大きいのです。本体の市場規模が約44億円なのに対し、プローブは約279億円。6倍を超える差があります。
今週の数字:市場規模279億円、本体の6倍
| 市場規模(生産+輸入) | 約278.5億円 |
| 国内生産 | 約147.9億円 |
| 輸入 | 約130.5億円(約47%) |
| 輸出 | 約17.5億円 |
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/105-1c.html
市場規模は約279億円。測定器本体(約44億円)の6倍を超える大きさです。国内生産が約148億円、輸入が約47%で、国産と輸入がほぼ拮抗しています。輸出も約17.5億円あります。本体ではなく、使い捨ての消耗品のほうが市場の主役という、はっきりした構造を持つ品目です。患者さんごとに交換され、病院が稼働する限り消費され続けるため、需要は安定して大量に発生します。
なぜ消耗品のほうが大きいのか——替刃モデルの典型
測定器の本体は、一度買えば何年も使われます。一方、使い捨てプローブは、患者さんごとに、あるいは一定期間ごとに交換され、日々消費されていきます。機器は売り切りでも、消耗品は使われ続ける限り売れ続ける。金額の主戦場が本体から消耗品に移るのは、この構造の必然です。髭剃りの本体と替刃の関係と同じで、本当の市場は替刃の側にあります。
このプローブは、光を出し受け取る小さな光学部品と、それを支えるフィルムや配線、印刷されたセンサー、肌に貼る粘着素材を組み合わせた製品です。単純な使い捨て品に見えて、正確な測定を支えるための作り込みが詰まっています。そして国産が約半分を占めていることは、日本の製造業がこの種の精密な消耗品を作る力を持っていることを示しています。
機会の所在——印刷・フィルム・粘着の技術が活きる
この品目の機会は、消耗品そのものの製造にあります。プローブを構成するのは、フィルムの加工、センサーの印刷、小さな光学部品、肌に貼る粘着素材。これらは、印刷・フィルム加工・粘着素材といった業種の技術と重なります。電子機器の本体を作る技術ではなく、精密な使い捨て部品を安定した品質で大量に作る技術が問われる領域です。
市場の約半分がまだ輸入であることも、見ておきたい点です。国産が半分を占めているとはいえ、残り半分には国産が置き換わる余地があります。一度採用されれば繰り返し注文が入る消耗品であり、安定した品質と供給を実現できれば、息の長い取引につながります。本体を作らずに、本体の6倍の市場に部材から関わる。それがこの品目の入り口です。
中小企業の入り口はどこか
入り口はプローブの製造と部材です。フィルムの加工、センサーの印刷、光学部品、粘着素材。これらの技術を持つ会社にとって、自社の強みをそのまま活かせる領域です。完成品のプローブを手がける道もあれば、その部材を供給する道もあります。
使い捨てプローブは、管理医療機器として第三者認証機関の審査で市場に出せる区分にあたると考えられます。完成品まで手がける場合でも、医療機器の中では参入しやすい部類です。印刷やフィルム加工の会社が、医療分野の消耗品に踏み出す入り口として現実的な品目です。
売り先は、病院などの医療機関で、地域のディーラー(医療機器販売業者)が窓口になります。消耗品は繰り返し注文が入るため、ディーラーにとっても扱いやすい商材です。ただし、プローブは測定器本体との組み合わせで使われるため、どの本体に対応させるかという互換性の設計が要点になります。誰のどの機器に向けて作るかを見極めることが、参入の出発点です。
今週のまとめ
単回使用パルスオキシメータプローブは、市場規模約279億円・本体の6倍・国産が半分。本体ではなく使い捨ての消耗品が市場の主役という、替刃モデルのはっきりした実例でした。印刷・フィルム加工・粘着素材の技術を持つ会社にとって、本体を作らずに大きな市場に関わる入り口があります。機器の本体ではなく、毎日消費される消耗品の側に市場を見る。その目で、自社の技術が活きる消耗品を探してみてください。
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本記事の統計数値は厚生労働省「薬事工業生産動態統計年報」(令和6年)に基づきます。市場の解釈・ビジネス機会に関する記述は筆者の見解であり、特定の事業の成果を保証するものではありません。医療機器の製造販売には薬機法に基づく許認可が必要です。具体的な参入をご検討の際は専門家にご相談ください。