ヘルスケア新規参入コラムNo.019 頭蓋形状矯正ヘルメット——26億円市場の8割が国産。デジタル採型×個別製造の好例

ヘルスケア参入機会図鑑

毎週1つの医療機器を公的統計の数字で読み解き、部材供給から最終製品まで、中小企業の事業機会を探すシリーズです。

No.019頭蓋形状矯正ヘルメットずがいけいじょうきょうせいへるめっと
頭のかたちが気になる乳児に装着し、成長に合わせて形を整えるヘルメット。市場規模26億円で、その約8割が国産。一人ひとりに合わせて作られる。
3D
国産の空白(輸入依存度)21%
規制クラスクラスII(管理医療機器)
IIIIIIIV
クラスIIは第三者認証機関の審査で販売可能。4段階の中では参入しやすい部類
参入余地(筆者評価)
★★★★★
市場規模(生産+輸入)と輸出(金額ベース・令和6年)市場規模26億円国産 21億輸入 6億円輸出ほぼゼロ
出典:厚生労働省「令和6年 薬事工業生産動態統計年報」第15表より筆者作成(製造販売業者の取扱金額ベース)
この回が関係する業種3Dスキャン・採型樹脂成形3Dプリント

皆さん、こんにちは!ヘルスケアビジネス総研の原です。

赤ちゃんの頭のかたちが、向き癖などで少しゆがむことがあります。多くは成長とともに自然に整いますが、程度によっては、頭のかたちを整えるためのヘルメットを使うことがあります。乳児の頭蓋骨がやわらかい時期に装着し、成長に合わせて形を導いていく。今回の頭蓋形状矯正ヘルメットは、そのための機器です。子育て世代の関心が高く、ここ数年で知られるようになりました。

比較的新しいこの分野ですが、産業として見ると、市場の約8割が国産です。一人ひとりの頭のかたちに合わせて作る、個別生産の好例になっています。

今週の数字:市場規模26億円、国産が8割

頭蓋形状矯正ヘルメットの生産・輸入・輸出金額(令和6年)
市場規模(生産+輸入)約26.3億円
国内生産約20.9億円
輸入約5.5億円(約21%)
輸出ほぼゼロ
出典:厚生労働省「令和6年 薬事工業生産動態統計年報」第15表(医療機器一般的名称別生産・輸入・輸出金額)より筆者作成。金額は製造販売業者の取扱金額ベース。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/105-1c.html

市場規模は約26億円。大きな市場ではありませんが、国内生産が約20.9億円で、輸入は約21%にとどまります。輸出はほぼゼロ。国内で作られ、国内の赤ちゃんに使われている品目です。比較的新しく登場した機器でありながら国産が中心という点は、この分野の作られ方に理由があります。多くは公的医療保険の対象外で、家庭が費用を負担する自由診療として行われている点も、この市場の特徴です。それでも一定の規模があるのは、わが子の頭のかたちを案じる親の関心の高さを映していると言えます。

なぜ国産が強いのか——一人ひとり違う、を量産できない

このヘルメットは、既製品をそのまま使うものではありません。赤ちゃん一人ひとりの頭のかたちを測り、その子だけに合うように作られます。つまり、大量に作って安く売る量産品とは、根本的に性質が違うのです。

作る工程は、まず赤ちゃんの頭を3次元で計測(採型)し、そのデータをもとに、その子に合った形を設計し、樹脂成形や3Dプリントで一つだけ作る、という流れです。計測から製造までが一人ひとり個別である以上、海外の工場でまとめて作って輸入する、というやり方が成り立ちにくい。「一人ひとり違う」という性質そのものが、国産が残る理由になっています。計測する医療機関と、作る工程が、国内で近くにあることに意味があるのです。

機会の所在——デジタル個別製造のものづくり

この品目が示すのは、医療機器における個別製造という、新しいものづくりの形です。一人ひとりの体に合わせて作る製品は、計測のデジタル化と、それを形にする製造技術がそろって初めて成り立ちます。3次元計測、データをもとにした設計、樹脂成形や3Dプリントによる個別製造。これらの技術を持つ会社にとって、活かしどころのある領域です。

そしてこの「デジタルで計測し、一人ひとりに合わせて作る」という考え方は、ヘルメットだけのものではありません。体に合わせて作る装具や、個別に形を合わせる医療・ヘルスケア製品へと広がる可能性を持っています。頭蓋形状矯正ヘルメットは、その入り口として手がけやすい品目だと言えます。市場規模は26億円と大きくありませんが、個別製造のノウハウを蓄える足場として見ると、価値があります。

中小企業の入り口はどこか

入り口は計測から個別製造までの工程です。3次元スキャンによる採型、データをもとにした設計、樹脂成形や3Dプリントによる製造。これらのいずれか、あるいは組み合わせを担う形が考えられます。デジタル設計や3Dプリントに取り組んできた会社にとって、その技術を医療・ヘルスケアに向ける接点になります。

このヘルメットは、管理医療機器として第三者認証機関の審査で市場に出せる区分にあたると考えられます。一人ひとりに合わせて作る製品ならではの品質管理の考え方を学べる点も、今後の個別製造ビジネスへの足がかりになります。

売り先は、この治療を扱う医療機関です。計測する医療機関と製造する側の連携が、製品の質を左右します。医療機関とどう組むかが、この分野に関わるうえでの鍵になります。

今週のまとめ

頭蓋形状矯正ヘルメットは、市場規模約26億円・国産8割。一人ひとりの頭のかたちに合わせて作るという性質が、量産・輸入になじまず、国産を残している品目でした。「一人ひとり違う」を形にするデジタル個別製造は、これからのものづくりの一つの方向です。3次元計測や3Dプリントの技術を持つ会社にとって、医療・ヘルスケアの個別製造に踏み出す入り口になります。自社のデジタル製造の力が、体に合わせて作る製品のどこに活きるか、考えてみてください。

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本記事の統計数値は厚生労働省「薬事工業生産動態統計年報」(令和6年)に基づきます。市場の解釈・ビジネス機会に関する記述は筆者の見解であり、特定の事業の成果を保証するものではありません。医療機器の製造販売には薬機法に基づく許認可が必要です。具体的な参入をご検討の際は専門家にご相談ください。

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