ヘルスケア新規参入コラムNo.010 連続式電解水生成器——国内228億円・輸出179億円。目立たない輸出型の設備機器
毎週1つの医療機器を公的統計の数字で読み解き、部材供給から最終製品まで、中小企業の事業機会を探すシリーズです。
皆さん、こんにちは!ヘルスケアビジネス総研の原です。
今回の品目は、「見たことがない」という方が大半だと思われる機器です。連続式電解水生成器。水に電気を流して分解し、洗浄や消毒に使える水を連続的につくり出す装置です。家庭の棚に置くものではなく、医療機関や事業所の水回りに据え付けられる、設備型の医療機器です。
馴染みの薄い機器ですが、国内市場約228億円が全量国産で、輸出が約179億円あります。国内市場に迫る規模の輸出がある品目です。
今週の数字:国内228億円・全量国産・輸出179億円
| 市場規模(生産+輸入) | 約227.6億円 |
| 国内生産 | 約227.6億円 |
| 輸入 | ゼロ(0%) |
| 輸出 | 約178.8億円 |
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/105-1c.html
市場規模は約228億円で、輸入はゼロ。さらに輸出が約179億円ありますから、国内の生産現場は、国内市場とほぼ同じ規模の海外需要にも応えていることになります。生産・国内供給・輸出のすべてが国内のものづくりで回っている。統計の上では、これ以上ないほどきれいな国産型・輸出型の品目です。
家庭向けの量産機器には、価格競争で生産が海外へ移り、輸入品が市場の大半を占める品目が少なくありません。その対極にあるのが、この設備型の品目です。同じ「医療機器」という言葉の中に、まるで性格の違う産業が同居している。品目別に統計を見る理由は、ここにあります。
なぜ日本の装置が強いのか——設備ビジネスという土俵
この装置は、単体で完結する製品ではありません。設置先の水道設備につなぎ込み、用途に合った水質を安定して出し続け、電極などの消耗部品を交換しながら何年も使い続ける。つまり、売って終わりではなく、設置・保守・部品交換まで含めた設備ビジネスです。
この土俵は、価格だけの勝負になりにくい土俵です。水処理や電気化学の技術に加えて、施工の品質、故障時の対応、長期の安定稼働といった、目に見えにくい部分が評価を左右します。日本の設備産業が積み上げてきた信頼の型がそのまま活きる領域であり、輸入ゼロ・輸出179億円という数字は、その強さの表れと読めます。医療の現場では内視鏡の洗浄をはじめとする衛生管理の工程で使われており、衛生への要求が世界的に高まる流れも追い風です。
機会の所在——フローの売上ではなく、ストックの収益
設備型ビジネスの収益構造には、はっきりした特徴があります。装置の販売(フロー)に加えて、設置後の保守契約や電極・フィルターなどの部品交換(ストック)が、長期にわたって収益を生み続けることです。台数が積み上がるほどストック収益が厚くなる。この構造は、景気の波に強い事業の典型です。エレベーターや空調設備の商売を思い浮かべていただくと、近い形です。
また、装置が止まると設置先の業務が止まるという性格上、保守の確かさそのものが商品価値になります。価格の安さではなく、止めない体制で選ばれる。中小企業が大手と伍してきた設備産業の戦い方が、医療機器の世界でもそのまま通用する領域です。
そして輸出179億円という数字は、この装置が世界の現場に据え付けられていくことを意味します。据え付けられた装置の数だけ、部品と保守の需要が国内外に積み上がっていく。完成品メーカーにならなくても、この大きな流れの中に部材や工程で加わることができれば、安定した商売につながります。
中小企業の入り口はどこか
まず手前の入り口は部材・部品の供給です。装置の心臓部である電解槽まわりの部材、水に触れる配管部品や継手、流量や水質を監視するセンサーと制御の電装部品、そして筐体の板金・樹脂。水処理機器や厨房設備の部品をつくってきた会社なら、技術的に地続きの領域です。部材の供給側に医療機器の認証は基本的に不要です。
次の入り口は、ものではなく工事とサービスです。設備型の機器は、設置工事と定期メンテナンスの担い手を地域ごとに必要とします。配管・施工や設備保守を本業とする会社が、医療・衛生分野の機器の施工網に加わる。製造業でなくても参入できる、設備型品目ならではの入り口です。
完成品はクラスII(管理医療機器)で、第三者認証機関の審査で市場に出せるルートがありますが、この市場で完成品に挑むなら、全量国産という数字が示す既存勢力の厚みを正面から受けることになります。現実的なのは、供給網と施工・保守網への参画から始める道です。まず仕事を通じて業界の中に入り、製品と現場を知ってから次の一手を考える。設備の世界では当たり前のこの順番が、医療機器でもそのまま通用します。
今週のまとめ
連続式電解水生成器は、国内市場約228億円・全量国産・輸出約179億円。一般にはほとんど知られていないのに、数字の上では有数の輸出型品目でした。設備型の機器は、売ったあとの保守と部品交換が収益の柱になるのが持ち味です。装置そのものをつくれなくても、部材・施工・保守という入り口がある。御社の本業と重なる点がないか、設備の目線でこの品目の周りを探してみてください。
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本記事の統計数値は厚生労働省「薬事工業生産動態統計年報」(令和6年)に基づきます。市場の解釈・ビジネス機会に関する記述は筆者の見解であり、特定の事業の成果を保証するものではありません。医療機器の製造販売には薬機法に基づく許認可が必要です。具体的な参入をご検討の際は専門家にご相談ください。