見てわかるヘルスケア事業の勝ち筋【図解4】技術転用か新規開発か、成功確率を決めるのは「何を持っているか」ではなく「誰と始めるか」
この図解には、医療機器開発における事業化の成否を左右しやすい2つの軸が組み込まれています。1つ目は「開発の起点」、つまり自社技術から始めるのか、顧客からの依頼(ニーズ確認済)で始めるのか。2つ目は「既存技術の適合度(流用度)」、つまり自社が持っている技術をどの程度そのまま医療用途に使えるのか。これらを動かすことで、開発費や期間だけでなく、5年累計の売上期待値(あくまでシミュレーション上の目安)まで試算できる仕掛けになっています。「ウチのセンサー技術は医療にも使えそうだが、本当にそのまま転用できるのか、それとも作り直しになるのか」という迷いを抱えている方にこそ、まず触ってみてほしい内容です。
この図で何が見えるのか
まず画面左側の操作パネルを見てください。医療機器クラスを3段階から選び、その下にある2本のスライダーで「開発の起点」と「既存技術の適合度」を動かせます。一般にクラスが上がるほど、開発費用・期間が増える傾向がありますが、ここで注目したいのは「成功率」がどう変わるかです。スライダーを左右に動かすと、右側に表示されるシミュレーション結果(開発投資、開発期間、事業化成功率、5年累計売上期待値)が更新されます。
次に、「事業化成功率マップ」と呼ばれる2×2のマトリクスに目を移してください。横軸が開発の起点(左:顧客起点=ニーズ確認済、右:技術起点=ニーズ未確認)、縦軸が既存技術の流用度です。現在の条件が●で表示されるので、設定を変えながら「理想パターン」「危険パターン」「王道パターン」「失敗パターン」のどこに位置するか確認できます。たとえば流用度を高くしても、起点が技術側(ニーズ未確認)に寄っている限り、成功率が伸びにくい——そんな関係が見えやすくなっています。
最後に、折れ線グラフで描かれる「投資回収シミュレーション(5年間)」を見てください。成功した場合と失敗した場合の累積損益推移、そして累積投資が並びます。どの時点で投資回収に至りそうか、あるいは至らずに損失が積み上がりそうかを、数字だけでなく形で確認できます。シナリオ詳細欄には、失敗した場合の主な失敗要因も表示されるので、「開発が形になっても売上が続かない」リスクを具体的に想像しやすいはずです。
経営者としてどこを問い直すか
この図解を動かしてみると、「技術が医療に転用できるか」という問いだけでは、論点が足りないことに気づきます。問題は技術の成熟度や適合度だけでなく、そもそも「誰のどんな困りごとを解決するのか」が先に固まっているかどうかです。図解の前提でも、ニーズが確認されている(顧客起点)場合は、追加開発が必要でも成功率が高く出やすい一方、ニーズ未確認(技術起点)だと、流用度が高くても「危険パターン」に入りやすい、という整理になっています。
ここには、ものづくりに強い会社ほど陥りやすい落とし穴があります。「ウチの技術は確かだから、医療用にアレンジすれば売れるはずだ」と考えたくなる。しかし医療機器では、技術が成立しても、販売が伸びない・採用されない、ということが起こり得ます。販売チャネル、価格、現場の運用、導入の意思決定プロセスなど、“技術の外側”の条件が揃わないと、売上が継続しないからです。
もう一つ問い直したいのは、「開発コストと期間を抑えること」と「事業として成功すること」の関係です。既存技術を転用できれば開発投資は下がりやすい反面、それが売上に結びつくかは別問題です。この図解は、成功時と失敗時の累積損益が大きく分かれうることを、あえて見せる設計になっています。開発費を抑えても売れなければ損失ですし、開発費が増えても売れれば回収に近づきます。どちらを取りにいくかは、投資可能な体力と、顧客との関係(ニーズ確認の深さ)がどこまで固まっているかで変わります。
自社の技術を医療に転用できるかどうか、ではなく、「その技術を必要としている顧客が目の前にいるか」。まずそこから問い直してみてください。