見てわかるヘルスケア事業の勝ち筋【図解3】「消耗品で稼ぐ」モデルは医療機器でも通用するのか——シミュレーションが示す現実

インタラクティブ図解:医療機器バリューチェーン収益構造モデル

病院に据え置き型の機械を入れるとき、メーカーの儲け方には大きく2つの道があります。本体の価格を高めに設定して最初に回収するか、本体は入りやすくしておいて使うたびに必要になるディスポ(専用キット・カートリッジ・試薬など)で長く回収するか。この図解では、その2つの回収方法を6年間にわたってシミュレーションし、どちらが結局どのくらい粗利を積み上げやすいのかを累積グラフで見せています。「プリンターのインクのように、消耗品で儲けるモデルを医療でもやりたいが、本当に成り立つのか?」という問いに、条件を動かしながら答えを探れる仕組みです。

この図で何が見えるのか

まず左側の操作パネルで、シミュレーションの条件を設定します。「ディスポのもうかりやすさ」は、1回使うごとに得られる粗利の大きさを「強い・ふつう・弱い」の3段階で選びます。価格が立ちやすい製品と、値下げや節約の影響を受けやすい製品では、この差が6年後の累積に効いてきます。

次にスライダーで「使い始めるまでの時間」を動かしてください。病院に機械を入れても、すぐにディスポがどんどん回るわけではありません。稟議、スタッフ教育、院内手順の整備、初期の症例確保など、立ち上がりには時間がかかります。このスライダーを長めに設定すると、ディスポで回収するモデルの累積グラフが伸び始めるまでに時間差が出ることが見えてきます。

もうひとつのスライダー「想定どおり使われる度合い」は、計画した使用量に対して実際にどれだけ使われるかを調整します。症例が伸びない、現場で節約される、運用が定着しないといった現実のばらつきを、この数字で表現しています。100%が計画どおりで、それより低いとディスポ収益が目減りしやすくなります。さらに「節約・再使用」スイッチをONにすると、長期運用で使用量が少しずつ減っていく効果が加わり、累積グラフの伸びが鈍くなる方向に働きます。

右側のグラフエリアでは、「累積粗利」と「年ごとの内訳」を切り替えて見ることができます。累積のグラフでは、本体で回収するモデルが最初から高い位置にいる一方、ディスポで回収するモデルは遅れて追い上げていく形になります。条件次第では追い越せず終わることもあれば、途中で引き離すこともあります。年ごとの内訳を見ると、同じ年でも本体・ディスポ・保守のどこで稼いでいるかが違うことが分かります。

グラフの下にはビューを切り替えるボタンが並んでおり、「合計(LTV)」「立ち上がり」「使用量リスク」という3つの観点を選べます。どの観点を選ぶかによって、説明文や数値が連動して切り替わる仕組みです。6年間でどのくらいの差が生まれうるのか、立ち上がりが遅れたときに累積にどう響くのか、使用量が計画より少なかった場合にどの程度下振れしうるのか——それぞれの角度から、現在の条件に基づいたシミュレーション結果を確認できます。

経営者としてどこを問い直すか

ディスポで回収するモデルは、いわゆる「カミソリの刃」型のリカーリング収益です。プリンターのインク、コーヒーメーカーのカプセル、そしてジレットの替刃。消費財の世界では成功例が多いこのモデルですが、医療機器に持ち込んだとき、同じようにうまくいくとは限りません。

この図解を動かしてみると、ディスポ回収モデルが優位に立つには、いくつかの条件が揃う必要があることが見えてきます。まず、ディスポの粗利が「強い」こと。これは単価が高いかどうかだけでなく、節約の対象になりやすいか、といった影響も含みます。専用設計で運用上ほかに置き換えにくいのか、あるいは代替されやすいのか。その違いが、6年後の累積に響きます。

次に、立ち上がりの遅さです。病院は消費者向けビジネスと違って、新しい機器を導入してから本格稼働するまでに時間がかかりがちです。スライダーを6か月から12か月、18か月と動かしてみると、累積グラフの差が開きにくくなったり、追い上げが遅れたりする様子が見えてきます。場合によっては6年の期間内に追い抜けないこともあります。事業計画で「数年で回収」と置いても、立ち上がりの遅れで前提が崩れるリスクは、このグラフが直感的に示してくれます。

さらに「節約・再使用」スイッチをONにすると、長期運用でディスポの使用量がじわじわ減っていく想定が加わります。図解では、規制下で起こり得る再製造/再使用の影響を「使用量が目減りする」形で単純化しています。ここがONになると、累積グラフの後半の伸びが鈍りやすくなり、「後半で伸びるはず」という期待が揺らぐ可能性が見えてきます。

本体で回収するモデルは、最初に大きく回収するため、立ち上がりの遅れや使用量のばらつきに相対的に左右されにくい構造です。ただし、本体価格が高いほど導入のハードルが上がり、台数が伸びにくくなるトレードオフが出やすい点は押さえておく必要があります。どちらが正解かは製品特性や市場環境によって変わりますが、この図解は「どの条件がどちらに効くか」を可視化することで、自社の前提を問い直すきっかけを与えてくれます。

消耗品で稼ぐモデルを医療機器で成立させるには、ディスポの収益性、立ち上がりのスピード、使用量の安定性という3つが揃うことが一つの目安になります。逆に言えば、どれかひとつでも弱い場合には、本体で回収するモデルのほうが堅実になりうる——まずはその現実を、数字の動きとして確認するのが近道です。

この図解を動かしながら、自社が本当に守れる前提と、願望で置いている前提を区別してみてください。結局のところ、「リカーリング収益」という響きの良さに惹かれているのか、それとも医療の現場でそれを支えてくれる運用と条件が揃うのか。その問いに向き合うことが、事業モデルを選ぶ出発点になります。

無料メルマガで厳選されたビジネスヒントを受け取る

※ボタンをクリックするとメルマガ登録フォームに遷移します

Follow me!