ヘルスケア新規参入コラムNo.016 CGM用センサ——411億円が全量輸入。急成長する血糖測定の最前線

ヘルスケア参入機会図鑑

毎週1つの医療機器を公的統計の数字で読み解き、部材供給から最終製品まで、中小企業の事業機会を探すシリーズです。

No.016持続血糖測定器(CGM)用センサじぞくけっとうそくていきせんさ
腕などに貼り、血糖値を24時間連続で測り続ける小型センサ。市場規模411億円が全量輸入で、近年急成長している消耗品。
24h
国産の空白(輸入依存度)100%
規制クラスクラスIII(高度管理医療機器)
IIIIIIIV
クラスIIIの多くは厚生労働大臣の承認が必要。審査のハードルは高い
参入余地(筆者評価)
★★★★★
市場規模(生産+輸入)と輸出(金額ベース・令和6年)市場規模411億円輸入 411億円輸出ほぼゼロ
出典:厚生労働省「令和6年 薬事工業生産動態統計年報」第15表より筆者作成(製造販売業者の取扱金額ベース)
この回が関係する業種バイオセンサー微細加工接着・貼付

皆さん、こんにちは!ヘルスケアビジネス総研の原です。

二の腕などに五百円玉ほどのセンサを貼り、針を刺すことなく血糖値を一日中測り続ける。糖尿病の治療を大きく変えつつあるのが、この持続血糖測定器です。英語の頭文字からCGMと呼ばれます。スマートフォンをかざせば、いまの血糖値も、過去の推移のグラフも確認できます。糖尿病の方の生活を支える、新しい世代の機器です。

急速に普及が進むこの分野ですが、統計上の数字には驚かされます。市場規模411億円が、まるごと輸入です。国内生産はゼロです。

今週の数字:市場規模411億円、国産ゼロ

統計では「グルコースモニタシステム」という品目名で集計されています。

グルコースモニタシステムの生産・輸入・輸出金額(令和6年)
市場規模(生産+輸入)約410.6億円
国内生産ゼロ
輸入約410.6億円(100%)
輸出ほぼゼロ
出典:厚生労働省「令和6年 薬事工業生産動態統計年報」第15表(医療機器一般的名称別生産・輸入・輸出金額)より筆者作成。金額は製造販売業者の取扱金額ベース。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/105-1c.html

市場規模は約411億円。糖尿病領域の機器の中でも大きな市場です。そのすべてが輸入で、国内生産はゼロ。輸出もありません。日本の患者さんが使うセンサは、一枚残らず海外から運ばれてきている計算になります。しかもこのセンサは、一定の日数で貼り替える使い捨てです。患者さんが治療を続ける限り、繰り返し買われていく。本体ではなく消耗品が市場の中心であり、その消耗品が丸ごと輸入だという点に、この品目の特徴があります。市場は近年急速に伸びており、規模はさらに拡大していくと見られています。

なぜ国産がゼロなのか——先行者が築いた高い壁

CGMのセンサは、皮膚のすぐ下に挿した極細の電極で、組織液中のブドウ糖をリアルタイムに測り続ける、高度な使い捨てバイオセンサーです。長時間にわたって正確に測り続ける安定性、体に貼り続けても問題のない安全性、そして大量生産。これらをすべて満たす技術は容易ではありません。

この分野では、海外の専業メーカーが早くから開発に投資し、特許と臨床での実績を積み上げて、世界市場をほぼ独占してきました。後から国内で同じものを作ろうとしても、技術と知的財産の壁が高く、参入が進んでこなかった。国産ゼロという数字は、この先行者優位の表れと読めます。先行メーカーは関連する特許を幅広く押さえており、同じ仕組みで作ろうとすると特許の壁にぶつかります。それを避けて独自の方式を開発するには、長い時間と大きな投資が要ります。

機会の所在——巨大な空白、しかし最も高い壁

411億円が全量輸入で、しかも市場が伸び続けている。これは、国産供給の空白としては図抜けて大きいものです。経済安全保障や医療費の観点からも、これだけの市場を丸ごと海外に頼る状態が望ましいとは言えません。空白の大きさだけを見れば、これほどの好機はありません。

しかし正直に言えば、この空白を中小企業が単独で埋めるのは、現実的ではありません。先行メーカーが築いた技術・特許・臨床の壁は、医療機器の中でも最も高い部類です。中小企業の現実的な関わり方は、完成品センサの開発に挑む大学・大手・スタートアップを、要素技術で支える側に回ることです。微細な電極加工、生体に貼り続けられる接着素材、センサを包む樹脂。次世代センサの開発を部材で支える。そこに参入の糸口があります。

中小企業の入り口はどこか

入り口は次世代センサの要素技術・部材です。極細電極の微細加工、生体適合性の高い接着・貼付素材、小型化を支える樹脂や封止の技術。国産CGMの実現を目指す開発主体に対して、これらの部材や工程を提供する形が考えられます。完成品センサそのものを単独で作るのではなく、開発を支える立場です。

センサ本体はクラスIII(高度管理医療機器)で、承認の壁が高い品目です。完成品での参入は、相応の技術と資本、開発体制を持つ主体でなければ難しいことを前提に置く必要があります。

売り先は、CGMの開発に取り組む企業や研究機関です。市場の最前線で何が課題になっているかを知ることが、関わり方を見極める第一歩になります。

今週のまとめ

CGM用センサは、市場規模約411億円・全量輸入・急成長。国産供給の空白としては最大級ですが、同時に技術と特許の壁が最も高い品目でもありました。空白が大きいことと、参入しやすいことは別です。中小企業の現実的な道は、完成品に挑む開発主体を要素技術で支えること。自社の微細加工や素材の技術が、次世代センサのどこに効くか。大きな空白を前に、身の丈に合った関わり方を冷静に見極めてください。

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本記事の統計数値は厚生労働省「薬事工業生産動態統計年報」(令和6年)に基づきます。市場の解釈・ビジネス機会に関する記述は筆者の見解であり、特定の事業の成果を保証するものではありません。医療機器の製造販売には薬機法に基づく許認可が必要です。具体的な参入をご検討の際は専門家にご相談ください。

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