ヘルスケア新規参入コラムNo.012 酸素濃縮装置——105億円市場の7割が国産。レンタルで回る在宅医療機器

ヘルスケア参入機会図鑑

毎週1つの医療機器を公的統計の数字で読み解き、部材供給から最終製品まで、中小企業の事業機会を探すシリーズです。

No.012酸素濃縮装置さんそのうしゅくそうち
空気から酸素を濃縮して供給する、在宅酸素療法のための装置。市場規模105億円のうち約7割が国産で、多くはレンタルで使われる。
国産の空白(輸入依存度)31%
規制クラスクラスII(管理医療機器)
IIIIIIIV
クラスIIは第三者認証機関の審査で販売可能。4段階の中では参入しやすい部類
参入余地(筆者評価)
★★★★★
市場規模(生産+輸入)と輸出(金額ベース・令和6年)市場規模105億円国産 72億輸入 33億円輸出ほぼゼロ
出典:厚生労働省「令和6年 薬事工業生産動態統計年報」第15表より筆者作成(製造販売業者の取扱金額ベース)
この回が関係する業種吸着材コンプレッサ筐体・樹脂

皆さん、こんにちは!ヘルスケアビジネス総研の原です。

鼻に細いチューブをつけ、装置から酸素を吸いながら自宅で過ごす。慢性の肺の病気などで肺の働きが落ちた方が受ける、在宅酸素療法という治療があります。今回の酸素濃縮装置は、その治療を支える機器です。酸素ボンベを運び込むのではなく、室内の空気から酸素だけを濃縮して、患者さんに供給し続けます。

在宅で使われる医療機器ですが、産業として見ると、国産が約7割を占める品目です。

今週の数字:市場規模105億円、国産が7割

酸素濃縮装置の生産・輸入・輸出金額(令和6年)
市場規模(生産+輸入)約105.2億円
国内生産約72.4億円
輸入約32.9億円(約31%)
輸出ほぼゼロ
出典:厚生労働省「令和6年 薬事工業生産動態統計年報」第15表(医療機器一般的名称別生産・輸入・輸出金額)より筆者作成。金額は製造販売業者の取扱金額ベース。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/105-1c.html

市場規模は約105億円。国内生産が約72億円で、輸入は約31%にとどまります。輸出はほぼゼロで、国内で生産され、国内の患者さんに使われている構図です。在宅医療の機器としては、国内のものづくりがしっかり足場を保っている品目です。家庭で使う医療機器には、価格競争で生産が海外へ移り、市場の大半を輸入が占めるようになった品目が少なくありません。その中で国産が7割を保っているのは、この品目の性格を考えるうえで見逃せない数字です。

なぜ国産が強いのか——売り切らないビジネスだから

この装置の特徴は、買い切りではなく、医療機関を通じて患者さんに貸し出される形が中心であることです。患者さんは毎月の診察を受けながら装置を使い続け、医療機関や供給業者がその間の保守や点検を担います。装置を設置して終わりではなく、長く安定して動かし続けることが求められる機器です。

故障すれば患者さんの呼吸に直結するため、すぐに代わりの装置を届けられる体制や、全国にわたる保守の網が欠かせません。この「貸して、保守し続ける」仕組みは、製品を国内で供給する事業者にとって有利に働きます。海外から安い装置を持ち込むだけでは、保守の体制までは作れないからです。国産が約7割という数字は、この構造の表れと読めます。

事業の収益という面から見ても、この構造には意味があります。装置を一度売って終わりではなく、レンタル料という形で毎月の収益が積み上がっていく。装置が現場で使われ続ける限り、収益が続くしくみです。在宅医療の機器に共通する、この息の長い収益構造が、国内の事業者がこの市場に腰を据えてきた背景にあります。

機会の所在——装置の中身と、止めない運用

機会は、大きく二つの方向にあります。一つは装置を構成する部材です。酸素濃縮の心臓部は、空気中の窒素を吸着して酸素を濃縮する吸着材と、空気を送り込むコンプレッサ(圧縮機)です。加えて、静かさと小型化を支える筐体や防音の構造、長時間の連続運転に耐える部品。コンプレッサや吸着、防音といった技術を持つ会社には、地続きの領域です。

もう一つは、運用を支える仕組みです。患者さんの自宅で装置が正しく動いているか、使用時間が守られているかを離れて把握できれば、医療機関と供給業者の負担は大きく減ります。装置本体をつくらなくても、こうした見守りや稼働管理の側から市場に関わる道があります。在宅医療では、機器そのものと同じくらい、止めない運用の仕組みに価値が生まれます。

中小企業の入り口はどこか

手前の入り口は部材・部品の供給です。吸着材、コンプレッサ、防音・筐体の部品。装置メーカーへの部材供給という形であれば、自社で医療機器の許認可を抱える必要は基本的にありません。既存の機械・素材の技術を、在宅医療という伸びる分野に向ける接点になります。

装置そのものはクラスII(管理医療機器)で、第三者認証機関の審査で市場に出せるルートが整備されています。ただし、先に述べた通りこの市場の要は装置の性能だけでなく、全国規模の保守と供給の体制です。完成品で正面から参入するなら、その体制をどう築くかが最大の論点になります。

売り先は、在宅酸素療法を提供する医療機関や、その供給を担う在宅医療の事業者です。地域の在宅医療を支える事業者とのつながりが、この市場を理解する入り口になります。

今週のまとめ

酸素濃縮装置は、市場規模約105億円・国産7割・レンタル中心。装置を売って終わりではなく、貸して保守し続けるビジネスが、国内のものづくりの足場を守っている品目でした。高齢化が進む中で、在宅で完結する治療の機器は需要が伸びていく分野です。自社の技術が「装置の中身」と「止めない運用」のどちらに効くか。その二つの軸で、参入の入り口を探してみてください。

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本記事の統計数値は厚生労働省「薬事工業生産動態統計年報」(令和6年)に基づきます。市場の解釈・ビジネス機会に関する記述は筆者の見解であり、特定の事業の成果を保証するものではありません。医療機器の製造販売には薬機法に基づく許認可が必要です。具体的な参入をご検討の際は専門家にご相談ください。

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