見てわかるヘルスケア事業の勝ち筋【図解2】ニッチトップと大衆市場、中小企業が勝てるのはどちらか?10年シミュレーションで考える

インタラクティブ図解:医療機器バリューチェーン収益構造モデル

この図解では、2つの市場を並べて見比べることができます。ひとつは「ニッチ市場」で、たとえば特定の内視鏡手術でしか使わない単回使用の処置具のような、規模は小さいけれど競合も少ない領域です。もうひとつは「マス市場」で、慢性疾患領域の周辺機器(共同販売も想定されるようなもの)のように、規模は大きい一方で“勝てるほど参入が起きやすい”領域です。

「市場が大きいほうが儲かるに決まっている」と思いたくなる一方で、「大手が来たら太刀打ちできないのでは」という不安もある。この図解は、その迷いに向き合うための“比較用の一般化モデル”です(個別企業の実績を当てにいく用途ではありません)。

この図で何が見えるのか

まず画面上部のタブで「ニッチ市場」か「マス市場」かを選んでください。選んだ市場によって、下に表示される前提(想定市場規模、参入難易度、10年後の参入確率、累積黒字化など)と、グラフが切り替わります。

次に「先行投資額」と「競合の強さ」のスライダーを動かしてみてください。

– 先行投資額は、開発・立ち上げに使える総額の目安として置かれています。
– 競合の強さは、参入・単価下落・販促負担が強まる度合いをまとめたつまみです。

投資額を増やしても、ニッチ市場では一定以上で伸びが鈍る挙動になりやすいはずです。これは図解内の説明どおり、供給や販路の上限が効きやすく、投資先が途中で頭打ちになる構造を表しています。

グラフエリアには、10年間のキャッシュフロー推移が2本の線で描かれています。青い線が年間のキャッシュフロー、緑の線が累積のキャッシュフローです。太い横線がゼロ(黒字ライン)で、黒字・赤字の境目を示します。図解では、年間CFや累積CFの表示レンジが固定され、左右軸のゼロ位置が一致するように設計されています。

また、年間CFが不自然に跳ねないよう「実効シェア上限(中小のキャパ)」が入っています。ここを読み飛ばすと、“投資を積めば無限に伸びる”という誤解が起きやすいので、まずは前提として押さえてください。

画面下部には「分析ポイント」の切り替えがあり、「黒字化まで」「競合の圧力」「利益の厚み」の観点で見え方が変わります。観点を切り替えると、横棒グラフ(0〜100)の指標名も連動して切り替わります。

経営者としてどこを問い直すか

この図解が示しているのは、「市場規模が大きい=儲かる」とは言い切れない、という構造です。マス市場は初期に伸びやすい一方で、年数が進むにつれて参入圧が立ち上がる(図解では5〜10年の“年数ゲート”で表現)設計になっています。参入圧が高まる局面では、価格・販促負担・利益の厚みが削られやすく、累積の伸びが鈍るシナリオが起こり得ます。

スライダーを動かして「競合の強さ」を上げてみると、マス市場側の後半の失速が目立つはずです。ここで大事なのは、「負ける」と断言することではなく、“勝った後に削られる力が働きやすい市場構造”があることを、意思決定に織り込めているかです。

一方、ニッチ市場は「勝てば安定」と表現されているとおり、一定の条件を満たすと累積が安定しやすい設計です。ただし落とし穴もあります。ニッチは供給・販路の上限が効きやすく、投資額を積んでもどこかで伸びが鈍りやすい。つまり、ニッチは「小さく勝って安定する」道になりやすく、「投資を積んで大きく取りにいく」戦いとは相性が良くないケースがあります。

経営者として問い直すべきは、「10年後にどんな姿でいたいか」という時間軸です。短期の売上や立ち上がりだけを見るとマス市場が魅力的に映ることがありますが、後半に競争が増える前提で耐え方(販路、原価設計、共同販売の条件など)を用意できるかが問われます。逆に、限られた資本と人員で“勝ち切って守る”設計を取りたいなら、ニッチ市場のほうが意思決定が素直になることもあります。

最後に注意点です。この公開版は比較のための一般化モデルで、品目別・企業別の費用構造や参入確率を公開情報だけで一意に確定できない部分は、レンジを踏まえた類推(校正)を含みます。したがって、この図の数値そのものを自社計画に直結させるのではなく、「自社がどの前提に賭けているか」を洗い出すチェックリストとして使ってください。

この図解を前に、「うちの会社は10年後にどちらの景色を見ていたいのか」を、もう一度考え直してみてください。

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