見てわかるヘルスケア事業の勝ち筋【図解1】医療機器バリューチェーン、どこに立てば一番儲かるのか
この図には、医療機器ビジネスにおける5つの立ち位置が並んでいます。部品を納める会社、モジュールを組み立てる会社、完成品を受託製造する会社、自社ブランドで売る会社、そして機器導入後のサービスで稼ぐ会社です。「技術には自信があるけれど、下請けで終わるのか自社製品を持つのか、リスクとリターンの相場観がつかめない」という声をよく聞きます。
この図で何が見えるのか
まず、ページ上部に並んだ5枚のカードを眺めてください。部品供給から始まってサービスまで、標準的な営業利益率の目安が表示されています(右に行くほど高くなる設計です)。ここでひとつ、お気に入りのカードをクリックしてみてください。すると下のチャートと解説が、そのレイヤーの特性を詳しく見せてくれます。
次に、中央にある「市場ストレス」のスライダーを右へ動かしてみてください。これは市場全体に価格引き下げ圧力がかかったときのシミュレーションです。圧力を強めるほど、部品供給や完成品OEMといった価格決定権が弱いレイヤーほど利益率が圧縮されやすい、という関係が棒グラフで可視化されます。一方で、自社ブランドやサービスは相対的に下げ幅が小さく見えるはずです。なぜでしょうか。
最後に、右側のレーダーチャートに目を移してください。各レイヤーの「価格決定権」「参入障壁」「量産効果」という3つの軸で、ビジネス構造の違いを比較できます。価格決定権が高いほど、顧客からの値下げ要求に対して条件を守りやすい、という読み方になります。サービス層が圧力に強い背景は、このあたりの形の違いとして捉えると腹落ちします。
経営者としてどこを問い直すか
図から浮かび上がるのは、「技術があるから利益が出る」とは限らない、という現実です。部品メーカーや完成品OEMは、技術と設備投資の比重が高い一方で、価格決定権が弱い構造になりやすく、利益率は一桁台にとどまりがちです。固定費の比率が高いビジネスほど、市況の悪化や価格競争の局面で利益が崩れやすい点は、経営として要注意です。
逆に、自社ブランドやサービスは、相対的に参入障壁が高く、価格決定権を持ちやすいポジションです。図中の説明にもある通り、自社ブランドが高めの営業利益率を出しやすいのは、研究開発や規制対応などのコストを織り込んだ上でも成立する「価格を作れる」余地があるから、という理解ができます。サービス層は、導入後の保守・消耗品などの継続収益が中心になりやすく、純正指定などの条件が揃うと価格競争が起きにくい分、利益が残りやすい傾向があります。
ここで問うべきは、「自社はどのレイヤーに立っているのか、そしてそこに留まる理由は何か」です。下請け層に留まるのは、リスクを抑えたいからなのか。それとも上位レイヤーへ上がるための知財、規制対応(QMSを含む)や販売の力が足りないからなのか。もし後者であれば、何を積み上げればその壁を越えられるのかを、投資・人材・時間の単位に落として考える必要があります。
結局のところ、「今の立ち位置で本当にいいのか」という問いを、この図の前で自分自身に投げかけてみてください。