普通の会社でもできるヘルスケア事業参入の秘訣#51 医療機器企業の事業創造にAIがもたらす革新とは?

こんにちは。ヘルスケアビジネス総合研究所の原です。

先日、オンラインで開催されたGenspark SPARK JAPAN 2025に参加しました。医療、法律、教育といった専門分野のイノベーターたちと、人工知能企業のトップリーダーたちが直接対話する場でした。

Gensparkは人工知能の“実務タスク総合試験 GAIA”で世界1位。今注目されているシリコンバレー企業です。情報収集から資料作成、ツール操作まで “自走” できる力が国際的に証明されています。

このイベントで最も印象的だったのは、従来のような「AIツールの使い方講座」ではなかったことです。むしろ、各分野の専門家たちがAI企業のリーダーと対等な立場で、将来どのような可能性を共に創造できるかを議論していました。

「今、何をすべきか」という問いかけの意味

GensparkのCEOであるEric氏は、プレゼンテーションの冒頭で大きなスクリーンに「What Should I Do Now?」という文字を映し出しました。そして、こう続けました。「これは私からあなたへの質問ではありません。あなたが自分自身に問いかけるべき質問です」

参加者に向けて、Eric氏はさらに説明を加えました。「多くの人は、AIが完璧になるのを待っています。でも、未来は既に到来している。ただ不均等に分布しているだけなのです。今すぐ行動を起こす人と、様子見を続ける人の差が、この不均等な分布を生み出しています」

この言葉を聞いて、私は医療ビジネスの経営者の方々の顔を思い浮かべました。多くの方が「AIはまだ早い」「もう少し技術が成熟してから」と考えているのではないでしょうか。

サービス提供者とユーザーという関係の終焉

イベントが進むにつれて、私は重要な変化に気づきました。これまでのAI関連イベントでは、AI企業が「こんな機能があります」「こう使ってください」と説明し、参加者が「なるほど」と聞く構図でした。

しかし、今回は違いました。医師が「こんな課題を抱えている」と提示すると、AI企業側が「それなら一緒にこんなことができるかもしれない」と応える。教育者が「こんな未来を作りたい」と語ると、技術者が「そのためにはこんなアプローチが可能だ」と提案する。

つまり、AIを「使う」のではなく、AIと「共に創る」という新しい関係性が生まれていたのです。

新規事業への投資を躊躇する本当の理由

経営者の皆様が新規事業、特にAIを活用した事業への投資を躊躇する理由はよくわかります。投資対効果が見えにくい、技術がよくわからない、失敗のリスクが怖い。

しかし、SPARK JAPAN 2025で見えてきたのは、もはやそんな悠長なことを言っている場合ではないということです。医療分野でも、すでに先進的な組織はAIと共に新しいサービスを創造し始めています。

重要なのは、AIへの投資を「コスト」として見るのではなく、「共創パートナーへの投資」として捉えることです。優秀な人材を採用するとき、その人の給料をコストとは考えないでしょう。将来の成長への投資と考えるはずです。AIも同じです。

共創が生み出す新しい価値

イベントを通じて見えてきたのは、医療の専門家が持つ深い知見と、AI企業が持つ技術力が融合することで、これまでにない価値が生まれるということでした。

医療現場は患者さんの苦しみや課題を誰よりも理解しています。一方、AI企業は技術的な可能性を知っています。この両者が出会い、対等に議論することで、どちらか一方では決して思いつかないソリューションが生まれる。それは、単にAIツールを購入して使うのとは全く違う次元の話なのです。

経営者として踏み出すべき最初の一歩

では、具体的に何から始めればよいのでしょうか。

私が提案したいのは、たった一つです。「AIを共創パートナーとして迎え入れる」という決断をすることです。

これは単に最新技術を導入するという話ではありません。例えば、新しい優秀な人材を採用するとき、皆様はどうされるでしょうか。その人の能力を最大限に活かせる環境を整え、一緒に成長していく道を探るはずです。給料を「コスト」とは考えず、未来への「投資」として捉えるでしょう。

AIも同じです。月額数万円のAIサービスを「経費」として処理するのか、それとも「24時間働き続け、日々賢くなっていく新入社員への投資」として捉えるのか。この視点の違いが、5年後の企業の姿を大きく変えることになります。

新規事業投資の新しい考え方

Eric氏は最後にこう述べました。

The future belongs to early, humble adopters—start today, not tomorrow

「未来は、謙虚に、でも素早く新しいものを取り入れる人のものです。明日からではなく、今日から始めましょう」

この言葉を聞いて、私は20年前の電子カルテ導入時を思い出しました。当時も「紙のカルテで十分」「投資に見合わない」という声が多くありました。しかし、早期に導入を決断した医療機関は、今では圧倒的な業務効率と患者サービスの質を実現しています。

AIへの投資も同じ構図です。ただし、一つ大きな違いがあります。電子カルテは「業務を効率化するツール」でしたが、AIは「新しい事業を共に創るパートナー」なのです。

つまり、AIへの投資は、単なる設備投資ではありません。新規事業開発への投資であり、未来の収益源への投資なのです。しかも、このパートナーは休むことなく働き、経験を積むほど賢くなり、あなたのビジネスを深く理解していきます。

投資額の大小は問題ではありません。月額数万円から始められるAIサービスもあります。重要なのは、「共創パートナーを迎え入れる」という経営判断を、今、下すことです。

一緒に創る未来

医療ビジネスの世界は、今、大きな転換点を迎えています。従来の「サービスを提供する側」と「使う側」という関係は終わりを告げ、「共に創る」新しい時代が始まっています。

この変化の波に乗るか、取り残されるか。その分岐点は、AIを単なるツールとして見るか、共創パートナーとして迎え入れるかという、経営者の皆様の視点にかかっています。

私たちヘルスケアビジネス総合研究所も、皆様がこの新しい時代に適応し、AIと共に新たな価値を創造していくお手伝いをさせていただきます。

SPARK JAPAN 2025が示した未来は、遠い先の話ではありません。それは今、ここから始まるのです。

AIという新しいパートナーと共に、医療ビジネスの新しい形を創っていきませんか。その第一歩は、今日から始められます。

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