普通の会社でもできるヘルスケア事業参入の秘訣#29 医療現場に観察に入るときのお作法とは?
こんにちは。ヘルスケアビジネス総合研究所の原です。
先日、医療機器メーカーのA社様から興味深いお話を伺いました。「原先生、先日、新製品の開発のために大学病院の手術室を見学に行ってきたのですが、思わぬところでつまずいてしまいました。医療現場特有の暗黙のルールがあることを、後になって知ったんです。」
このようなお悩みは、実は医療業界に新規参入される企業の方々からよく耳にします。今回は、医療現場に入る際の基本的なお作法についてお話ししたいと思います。
医療現場特有の文化を理解する
医療現場には、部外者には見えづらい独特の文化やルールが存在します。これらは医療従事者にとっては当たり前すぎて、あえて説明されることは少ないのですが、ビジネスパーソンが医療現場と関わる上で極めて重要な要素となります。
医療現場での立ち振る舞いは、大きく分けて「医療者との独特なコミュニケーション」「病院内の三大ルール」「情報管理」の3つの要素があります。これらは互いに密接に関連しており、どれか一つでも欠けると、スムーズな医療現場での活動に支障をきたす可能性があります。
医療従事者とのコミュニケーション術
医療現場でのコミュニケーションには特別な配慮が必要です。医師や看護師は常に患者さんの命に関わる緊張感の中で働いています。そのため、一般のビジネスシーンとは異なる独特のコミュニケーションスタイルが求められます。
例えば、手術室の見学をお願いする場合、単に「見せてください」という依頼ではなく、「手術の妨げにならない範囲で」「先生のご都合の良い時間帯に」といった配慮が必須です。また、医療機器の開発や改良に関する提案を行う際も、「現場の負担を軽減するため」「より安全な医療の提供のため」という視点を明確に示すことが重要です。
多忙を極める医師に対しては、特に時間の使い方に細心の注意を払う必要があります。例えば、予定の時間を5分でも超過することは、その後の診療スケジュール全体に影響を及ぼす可能性があります。そのため、要点を簡潔にまとめ、必要な情報を効率的に伝える技術が求められます。
医療現場の三大原則
医療現場における三大原則は、いわば現場での行動指針となる重要な柱です。医療安全・感染対策・医療倫理から成ります。
第一の医療安全については、単に「気をつける」という程度の認識では不十分です。
例えば、医療機器のケーブル類が通路に出ていないか、機器の配置が医療従事者の動線を妨げていないかなど、細部にまで注意を払う必要があります。また、緊急時の対応手順や避難経路なども事前に確認しておくことが求められます。
感染対策については、院内感染予防の観点から厳格なルールが設けられています。
手洗いや手指消毒はもちろんのこと、必要に応じてマスクやガウン、手袋の着用が求められます。特に手術室や集中治療室などの清潔区域では、より厳密な感染対策プロトコルに従う必要があります。
医療倫理に関しては、患者さんのプライバシーと尊厳を守ることが最重要です。
例えば、廊下でのやり取りや電話での会話でも、患者情報に触れる可能性があることを常に意識する必要があります。また、治験や新規医療機器の開発に関わる際は、患者さんの利益を最優先する倫理的な配慮が不可欠です。
情報管理の重要性
医療現場での情報管理は、一般的なビジネスシーンよりもさらに厳格な基準が求められます。
患者さんの個人情報は当然のことながら、医療技術や治療方法に関する機密情報、さらには研究開発段階の医療機器や治療法に関する情報まで、様々な機密情報が存在します。
特に注意すべき点として、院内での写真撮影や動画記録は原則として禁止されています。
必要な場合は必ず事前に許可を得る必要があり、その使用目的や範囲についても明確な取り決めが必要です。また、SNSなどでの情報発信については、たとえ院内の様子だけを写した写真であっても、慎重な判断が求められます。
ビジネス成功への近道
皆さんは、どの位ご存知だったでしょうか?
これらの原則やルールを理解し、適切に対応することで、医療現場との信頼関係を築くことができます。その結果、製品開発や改良に向けた建設的な意見交換が可能となり、より良い医療機器やサービスの開発につながっていきます。
医療現場でのビジネス展開において、これらのお作法を意識することは、単なるマナーの問題ではありません。
それは、医療従事者との信頼関係を築き、より良い医療の実現に向けた協力関係を構築するための重要な第一歩となるのです。医療機器やサービスの開発に携わる皆様には、ぜひこれらの点を意識していただき、円滑なビジネス展開につなげていただければと思います。
このコラムでは医療・ヘルスケアビジネスに関係する情報やノウハウをお送りしています。
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