普通の会社でもできるヘルスケア事業参入の秘訣# 25 顧客を納得させる「理由」の作り方

こんにちは。ヘルスケアビジネス総合研究所の原です。

先日、クライアントとの開発の会議をしているときの話です。開発中の商品コンセプトの課題についてディスカッションしていたのですが、どうすればお客さんとなる医療機関がもっとこの製品を買ってくれるのか、何に気をつけたら良いのか、という質問が上がりました。

そこで今回は、医療ヘルスケア分野で新商品を開発する際の重要なポイント、特に顧客を納得させる理由づくりについてお話しします。

最近は、国や自治体も新規事業やスタートアップの起業を大きく後押ししていることもあり、医療・ヘルスケア分野では新しい製品やサービスがどんどん生まれています。でも、ただ新しいというだけでは、特に医療の世界では通用しません。なぜでしょうか?

それは、病院や関連事業者が厳しい経営環境の中で、慎重にお金を使わなければならないからです。

医療現場での製品購入の考え方

医療分野での商品選びは、一般の買い物とはちょっと違います。例えば、私たちが新しいスマートフォンを買うときは、「最新モデルだから」とか「デザインが気に入った」といった理由で選ぶこともありますよね。でも、病院が新しい医療機器を導入するときは、そういうわけにはいきません。

病院の経営者や購買担当者は、こんなことを考えます。「この新しい機械は、今使っているものと比べて何がいいの?」「患者さんへのケアは良くなるの?」「維持費はどれくらいかかるの?」こうした疑問に答えられる理由がないと、なかなか新しい商品を採用してもらえないのです。

というのも、病院設備は個人的な好みで機材を選定することはなく、通常は競争入札などのスタイルですので、客観的に選択理由が分かる形で購入が決定することが多いです。妥当だと納得できるような理由を準備しておいて、それを製品のコンセプトや設計に活かしていくことができれば、購入してもらえる顧客層が拡がります。逆に、最新式だからといった理由だけで購入できる顧客は一部ですので、そう言った層にのみ照準を絞って開発をしてしまうと、初期は評判が良いのですが、事業として成長しないのです。

それでは、どうすれば顧客を納得させる理由を作れるでしょうか?いくつかのポイントをご紹介します。

まず、数字で効果を示すことです。例えば、「この機器を使えば、検査時間が3割短くなります」とか「診断の正確さが15%上がります」といった具体的な数字があれば、導入するメリットがはっきりしますよね。

次に、長期的なコスト計算についても伝えることです。最初の値段だけでなく、使い続けるときにかかるお金や、スタッフの人件費、研修費用なども含めて説明しましょう。これにより、病院経営者の方々に長い目で見たメリットを理解してもらえます。

さらに、実際に使っている人の声を集めることも大切です。「○○病院では、この機器を導入してから患者さんの待ち時間が半分になりました」といった具体例があれば、導入を検討している人の不安も減りますよね。

また、その商品が解決できる問題を明確に示すことも重要です。例えば、「この機器を使えば、人手不足の解消につながります」とか「医療ミスを減らせます」といった、病院が抱えている課題への解決策として提案するのです。

こうやって顧客が「なるほど、確かにこれは必要だ」と思えるような理由を作ることが、医療・ヘルスケア分野での商品開発成功の鍵となります。

理由づくりの仕込みは、開発前の段階から考えておく

こうした「理由」づくりは、商品を作り始める時から意識する必要があります。開発者やマーケティングの人たちが、常に使う人の立場に立って考え、「なぜこの商品が必要なのか」「どんな価値があるのか」を問い続けることが大切です。

そして、作った「理由」は、営業やPRのときにも一貫して使いましょう。カタログやウェブサイト、説明資料など、あらゆる場面で同じメッセージを発信することで、商品の価値を効果的に伝えられます。

なお、この理由のことを、アメリカのシリコンバレー界隈では、明確化された”ニーズ”(ニーズステートメント)と呼んでいます。

医療・ヘルスケアの現場は、人の命や健康に関わる大切な仕事です。だからこそ、新しいものを取り入れるときは慎重にならざるを得ません。でも、適切な「理由」を示すことで、革新的な製品やサービスが受け入れられ、医療の質を高めたり、効率を上げたりすることができるのです。

このコラムでは医療・ヘルスケアビジネスに関係する情報やノウハウをお送りしています。

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