#8 新型コロナウィルスが医療現場にもたらした知られざる変化

こんにちは、ヘルスケアビジネス総合研究所の原です。

先日、病院で診療しているときに、喉が痛くて具合が悪いから入院させて欲しいという方がいらっしゃいました。熱がある訳でもないですが念のため…と思って検査してみると、新型コロナウィルス感染症でした。最近はもう”新型”とは呼べなくなってきましたが、このように医療現場では未だに注意しないと感染が蔓延するリスクを孕んでおり、問題になっております。

さて今日はこの新型コロナウィルスが医療現場にもたらした、もう1つの知られざる変化についてお伝えします。新規事業や売上アップを目指す方、医療・ヘルスケアビジネスに挑戦してみたい方に有益な事実をお伝えしますので、ぜひ最後までご覧下さい。

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コロナ禍前の医療現場と開発

新規事業と売上アップの件は一旦置いておいて、2020年に日本で新型コロナウイルス感染症が蔓延する前の話から始めます。日本の医療現場はデジタル化、オンライン化による業務効率化という観点でみるとかなり遅れていました。私は医療機器開発の関係者間では以前からSkypeやコーポレート向けのオンライン会議ツールを使っていましたが、当時は今のようにZoomやTeamsなどは普及しておらず、医療現場で働く医療従事者にはオンラインでミーティングを行う、業務環境をオンライン化するといった発想はありませんでした。

以下では、特に働き方に問題があるとか、超過勤務が多いと言われている医師業務を例に挙げてお話します。一般的に医師は多忙と言われていますが、実は移動時間が長いのも特徴です。わずか10分の業務連絡のために大学病院へ行く、新しい薬や医療機器の情報提供や説明会のために業務を中断して病院や会議室に行く、休日に他の医師に相談するとき電話で呼び出して病院に来てもらう、学会や講演会も現地開催でなければ出席扱いにならないので現地へ行く、といったように基本的にすべて現地へ足を運ぶのが基本でした。

なぜこのような文化があるかというと、医師が自ら患者さんの元へ行き、しっかりと診察を行うことが、正しい治療や事故防止にとって重要だと考えているからです。休日でも夜でも自分で患者さんの様子を診て、異常に早く気づいて何とか対処することができた、あるいは逆に「もう少し早く気づくことが出来たら…」という辛い経験をしていますので、自然と現場に行ってみるということが習慣付いたのだと思います。

こういった背景もありますので、コロナ禍前は、オンラインでやり取りするなんて失礼だという風潮があったのかもしれません。他には、実際にネットワーク関係の知識・経験をお持ちの医療従事者というのは非常に少なく、親和性が無くて普及できなかったという側面もあったと考えています。

このような現場重視の業務環境は、医療やヘルスケアの新商品開発においても、大きな負担になっていました。新商品の開発においては、医療現場の意見を聞きながら新商品ニーズの調査をする、あるいはテストマーケティングを行う、試作品のテストや評価を行うといったコミュニケーションの必要性があります。しかしそのためには、毎回病院や大学へ行く必要があったのです。

当然、対面コミュニケーションのメリットは今でも大きいことは念を押しておきます。しかし全ての業務を対面で実施するためには、開発者・医療者ともにかなりの時間的・費用的負担を強いられている点も見逃せません。

これを解決する1つの方策として、シリコンバレーにある有名な病院では、病院の地下に併設・整備された開発企業用のワークショップがあって、そこに製品設計のプロが常駐しており、試作品を作ってそのまま地上階にある病院の医師の元に持って行きテストを行う、という見事な導線を作って開発を高速化していました。

つまりこのくらいの先行投資をしなければ、スピーディーな開発というのはなかなか難しかった訳です。逆の言い方をすれば、病院のスペースを借りられるとか、密な医療従事者とのやり取りが実施できるような大きな資本を持った企業が有利で、新規参入者や中小規模の事業者には明らかに不利な状況でした。昔から「医療現場のニーズをしっかりと集めましょう」という声はありましたが、そのリソースがない以上、中小企業にとっては理想論になってしまっていたのです。

ヘルスケア商品開発の”民主化”

ところが、新型コロナウイルス感染症の後から状況が大きく変わりました。変化の理由として、リモート会議ツールや共有ツールの発達といった技術の進歩が大きな影響を与えているのは間違いないのですが、それよりも医療現場のカルチャーとして「ミーティングをオンライン化しても良い」という考え方が定着してきたのが一番の違いなのではと思います。

例えばコロナ感染のリスクがあるから患者と担当職員以外、病院で面会できないのは仕方ないと考えるようになったので、オンラインミーティングは適切だという大義名分が立つようになりました。今まで失礼だ、不適切だと言われてきたオンラインでの学術会議、商品のセールス、他の専門家への相談が、頻繁に行われるようになってきたのです。

そうすると現場の考え方に変化が起こります。一旦オンライン会議の便利さに気づいてしまったら、全て対面業務に戻すのが不便と感じるようになりますし、実際に業務効率化に寄与するということが分かってしまったのです。個人情報などを遵守できている限り、コミュニケーションを要する業務の多くが遠隔でも実施できるという認識に変わった結果、コロナ禍が過ぎ去った後である現在でも、オンライン化というカルチャーがそのまま維持できています

これは医療・ヘルスケアの新商品開発の現場でも大きな変化をもたらしました。コロナ禍以降は、ハードウェアの操作性テストなど一部の目的を除けば、現地に行かずに医療関係者にテスト・検証を行うことが容易にできるようになってきたのです。私はこれを、ヘルスケアビジネスにおける商品開発の民主化と呼んでいます。

医療現場とのコミュニケーションが民主化されたというのは、具体的には開発において三つの利用場面があると考えています。一つが商品開発設計前のニーズの調査です。二つ目が実際に商品設計している間の試作品のフィードバックやテストです。ここではオンラインでの共有ツールをうまく活用することで、対面のときよりも質の高いデータさえ取れるようになって来ました。そして三つ目はテストマーケティングです。今まではかなりハードルが高かった現地ユーザーとのオンライン会議や定量的・定性的テストを通して、時間コストが大幅に短縮したといえます。

これまではごく限られた先進的病院や特殊な環境でのみ、企業が医療現場とコミュニケーションを密に行いながら開発を進めることができていた訳ですが、大きな垣根を取っ払うことができたので、ヘルスケアビジネスの新規参入を狙うプレイヤーにとっては非常に大きなチャンスが訪れました。

ちなみに当社で医療現場のニーズ調査を行う場合、コロナ禍以前ですと、医師にインタビューを申し込む時には、ご依頼を含めて対面でのやり取りが必要となっていましたので、打ち合わせとインタビュー当日で2回現地に赴くなどの必要性もありました。その分、時間的・金銭的コストも掛かってしまっていたのですが、最近ですと、契約締結も含めすべて電子化されて完結できるように整備しましたので、そのコストが大幅に減りました。またSNSの発展によって、さまざまなルートから医療従事者にアプローチできるようになりました。

そうなってくると、従来はかなりの時間・費用をかけていた調査検証プロセスというのが、小規模事業者や大量リソースがない開発チームにとっても比較的手が届きやすくなってきたという訳です。今まで1人の医療従事者にインタビュー・助言をもらっていたところが、同じコスト・時間で5人分を実施できるようになった、というのが実情に近いと思います。

新たなプレイヤー/中小規模事業者にとって圧倒的有利に

これまでお伝えしてきたように、コロナ禍の後は、今まで医療現場とのコミュニケーションのハードルやコストが高すぎて新規参入ができなかった企業にチャンスが到来したと考えています。今の時点ではまだこの民主化に気づき新規事業の仕組みとして取り入れている企業は殆ど無いと思います。一部のヘルステックベンチャー企業くらいでしょう(ですがこういった新しいノウハウを、当社が独占していても意味がありませんので、今後もどんどん公開して行こうと考えております)。

もちろん今のように有利な環境がずっと続く訳ではないと思いますので、新規参入企業はぜひこの利点を有効期限切れになる前に活かして頂くことを願っております。チャンスを活かせるかどうかは、ひとえに行動するかどうかに掛かっています。ここまでお読み下さったあなたには、間違いなくチャンスがあります。ぜひ医療・ヘルスケアの新規事業を、お考え下さい。

このコラムでは医療・ヘルスケアビジネスに関係する情報やノウハウをお送りしています。

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