普通の会社でもできるヘルスケア事業参入の秘訣#39 米国の医療産業最新事情と個別化が進むAI

こんにちは。ヘルスケアビジネス総合研究所の原です。

今回は、カリフォルニア州アナハイムコンベンションセンターで開催された医療機器・製造技術の世界最大級の展示会、MD&M West 2025での最新動向についてお伝えします。

医療機器産業における技術革新の最前線

会場には、医療機器の製造・開発技術を持つ専門企業から大手総合メーカーまで、多様な企業が出展していました。特に印象的だったのは、ヨーロッパ系企業の積極的な出展です。日本からの出展は数社に留まっていましたが、ドイツやスイスなど欧州からの参加企業が目立ち、医療機器産業における欧州企業の存在感を強く感じました。

この展示会は、医療機器の設計から製造、品質管理に至るまでの最新技術が一堂に会する場として、世界中の医療機器メーカーやサプライヤーが注目しています。開発・製造技術を有する企業の展示やカンファレンスが中心ではありますが、AIやIoTなどのデジタル技術を活用した新しいソリューションの提案も増えてきており、業界の変革期を実感させる内容となっていました。

今年の展示会で特に注目を集めていたのは、製造工程や品質管理における機械学習やディープラーニングの活用でした。従来の自動化技術に加えて、生成AIを活用した新しい製造支援システムの提案も多く見られ、医療機器産業におけるAI活用の広がりを実感させる内容となっています。

AIの個別化がもたらす新たな可能性

その中でも、特に注目すべき新しいトレンドが「AIの個別化」です。これまでのAIは、ある程度パターン化された応答や、他者の入力したプロンプトの模倣に留まっていました。しかし、現在のAIは(特にChatGPT)個々のユーザーの入力パターンや興味の対象を学習し、より適切な対話や提案ができるように進化しています。

実際、私が出席したカンファレンスのプレゼンターの先生は、「プロンプトエンジニアリング(AIに意図した回答を引き出すために質問や指示の言葉を工夫する技術)は、間もなく廃れる」と予想していました。

この変化は、AIが単に「応答する存在」から「ユーザーを理解し適応する存在」へと進化していることを示しています。例えば、ユーザーごとの入力傾向や興味の対象を学習することで、より適切な情報提供や対話も可能になっています。

医療機器製造における個別化AIの活用事例

展示会では、医療機器業界におけるAIの実践的な活用例が多数紹介されていました。特に注目を集めていたのは、特許関連業務の効率化です。従来、専門家の経験と判断に大きく依存していた特許の調査や分析作業を、AIを活用して自動化・効率化する取り組みが紹介されていました。これにより、新製品開発における知的財産戦略の迅速な立案が可能になるとのことです。

一方で、展示会全体を通して印象的だったのは、AI以外にも重要なトレンドが数多く見られた点です。特にChange ManagementやSustainabilityといったキーワードが頻繁に登場し、デジタル技術の導入に伴う組織変革や、環境負荷低減に向けた製造プロセスの革新など、包括的な視点での業界の発展が議論されていました。

今後の展望と対応

しかし、このような進化が進むことで、AIシステムの管理や品質保証がより複雑になることが予想されます。また、個人情報の保護やプライバシーの観点からも、より慎重な取り扱いが必要となってきます。今後は、ビジネスにおけるAIの活用で、法規制・倫理面が重要な焦点となっていくでしょう。

私たちビジネスリーダーに求められているのは、このような技術進化をビジネスモデルの変革の機会として捉えることです。

今後は、AIとの協働をより戦略的に考え、自社の強みとAIの能力をいかに組み合わせていくかが重要になってくるでしょう。そのためには、MD&M Westのような国際展示会での最新動向を把握しつつ、自社のビジネスモデルを見直していく必要があります。技術革新とサステナビリティの両立という課題に、私たち医療機器産業はどのように向き合っていくのか。今回の展示会はその方向性を示唆する貴重な機会となりました。ぜひ読者の皆様も、海外での情報収集やネットワーキングに取り組んでみてはいかがでしょうか?

このコラムでは医療・ヘルスケアビジネスに関係する情報やノウハウをお送りしています。

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